奈良と山形のコラボレーション

2月13日、新橋にある奈良県のレストラン「Restaurant&Bar TOKi」で、ユニークなイベントがありました。

「TOKi」の立ち上げから尽力してきた奈良「アコルドゥ」の川島宙さんと、地方からの発信をいち早くつとめてきた山形「アルケッチャーノ」の奥田政行さん、そして「TOKi」の長谷川豊さんが、奈良と山形をテーマに料理を作るというので出かけました。

2009年の「奈良フードフェスティバル」のときにクーカル・ラボはプロデュースを依頼されました。川島さんを含め、そのときにお世話になったシェフたちとは今でもお力添えをいただいていますし、奈良という場所は一番ご縁を感じています。

川島さんは、実は東京のご出身。奥様(写真右端)が奈良出身ということで2008年頃に奈良に移り住みました。最初はとまどいが見え隠れしていた川島さんの料理は、10年以上の時が流れ、川島さんならではの表現力がズバンと光る「芯のある奈良の皿」になっていることを最近の「TOKi」や「アコルドゥ」で感じます。だからこそ、個性的なパワーが光る奥田さんのような方とコラボレーションをしても川島節はぶれないし(それは奥田さんも同じこと)、三人のシェフが、ふたつの地方をセッションさせて生まれたユニークな皿を、我々は安心して楽しめました。以下、いただいた資料より抜粋した料理解説です。

Ⅰ 雪に埋もれた雪菜
雪菜 山形りんごとホエーの雪 オイスターマヨネーズ
オイスターフラン マイクロチコリ

寒い冬に雪の下で育つ雪菜を表現。オイスターフランはミネラル分豊富な肥沃な大地をイメージしてある。ほろ苦く繊細な雪菜を邪魔しないような仕立てを目指した。同じく山形の冬の素材であるりんごを合わせつつ、軽やかな仕上がりは、この先にある春を連想させる。

Ⅱ 小野川豆もやしとホタテ出汁のパエジャ
もやし ホタテ ホタテ出汁 大宇陀サフラン トマト水 アイオリ

力強い食感が特徴の小野川もやし。スペインの細く短いパスタを使ったパエジャ『フィディワ』をイメージして小野川もやしで仕立てた。魚介の旨味にホタテとトマトリキッド、奈良・大宇陀で育つサフランのソースとにんにくマヨネーズを合わせて仕上げている。

Ⅲ 寒ダラのエスケシャーダと白子 TOKi風『どんがら汁』
寒ダラと大和橘胡椒のエスケシャーダ 白味噌エアー 岩のりの鱈のスープ
大和橘胡椒 白味噌のエア

山形の冬の海の素材である寒ダラ。新鮮なものは刺身でも食せるほど。そのフレッシュ感を残しつつ、庄内の郷土料理、『どんがら汁』をイメージした。鱈は塩漬けしてほぐした、スペインの『エスケシャーダ』仕立てに。奈良の大和橘胡椒と合わせた。白子、岩のりと鍋に入る素材に合わせて、奈良産の白味噌のエアで軽やかに仕上げた。

Ⅳ 庄内豚と大和肉鶏のテリーナ 伽耶の実と柿

庄内豚と大和肉鶏のテリーヌ 曽爾の伽耶の実 蜂蜜 柿酢リエ 干し柿ピュレ奈良と山形素材のブレンド。庄内の豚と奈良の地鶏で仕込んだテリーヌ。大宇陀ではその昔年貢にもされていた伽耶の実と奈良で採れる日本蜂蜜を合わせた。奈良らしい素材、柿はピュレにした干し柿と柿酢のジュレ、二つの形で。山形と奈良、山と里の素材で地域の季節が感じられる。

Ⅴ 小野川アサツキ 平目と大和肉鶏肝 醤酢 古都華苺
小野川アサツのキボイル 平目 肉鶏の肝コンフィ 古代醤

小野川アサツキ、平目は山形の冬に美味しい素材。醤酢で和えた、しっとりとしたレバーコンフィと合わせることで、素材や人、生きるものが寒さのなか力強く生きるイメージを表した。万葉集『醤酢に蒜搗きかてて鯛願ふ 願ふ、我れにな見えそ水葱の羹』に出てくる素材、蒜(ヒル)を小野川アサツキ、鯛を平目に。小野川アサツキは春を告げる素材と言われるそう。この歌に出てくる水葱は夏に花を咲かせる植物。春にその若葉を好んで食されていた。奈良の春の素材、古都華苺と合わせて、すぐ近くにある春を思う料理として。

Ⅵ 米沢牛のポチャール 大鉄砲の葛 菊菜のエッセンス

米沢牛スライス 昆布出汁ポシェ 大鉄砲豆乳のKuzu  菊菜エッセンス 山椒の実  卵黄ソース シェリービネガーの甘いジュ

日本的な味わいの料理を目指した。軽く火入れした米沢牛には奈良在来大豆『大鉄砲』の豆乳で作る葛(吉野産)、冬の大和伝統野菜・大和菊菜のエッセンス、卵黄とシェリー風味の甘いジュですき焼きのような印象に。一度だけ香る青い山椒の香りにこの今と次の季節も感じる。

Ⅶ TOKi風クレマカタラナと古都華苺

奈良ならではの酒もたくさん揃えられた。

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