歌舞伎座前の氷水屋から始まった、銀座と共に歩む100の物語
三笠会館が6月に100周年を迎えたことを記念し、記念本『三笠会館100年史』ができました。
クーカル・ラボでその編集を請け負いました。
1925年、大正末期の銀座・歌舞伎座前。創業者・谷善之丞(たに・ぜんのじょう)が夫婦で始めたのは、小さな氷水屋でした。かき氷が主力だった店は、冷夏の影響を受けながらも、温かいお汁粉を出す工夫や、軽食の提供へと踏み出していきます。その小さな一歩が、やがて銀座を代表する老舗レストラン「三笠会館」へとつながっていきました。
「三笠会館100年史」は、その長い歩みを年表ではなく“物語”として編み上げたものです。創業者の挑戦や苦悩、戦後の混乱期に人々を励ましたオムライスや、スタッフの知恵から生まれた「骨付き鶏の唐揚げ」の誕生秘話など、100のエピソードを、当時の記録や証言とともに紹介しています。
歴史的な写真、懐かしいメニュー、店舗の変遷を示す図やタイムラインも盛り込み、三笠会館が辿ってきた時代の空気を、視覚的にも感じていただけるようにしました。また、代表的な料理の再現レシピや家庭向けのアレンジも掲載し、味の記憶をたどる楽しみも添えています。
私たちクーカル・ラボはベテラン編集者&ライターである伊東由美子さん、松野玲子さんの協力を得て、本書の制作にあたり、創業期から現代に至るまでの資料を丹念に調べ、関係者の方々への取材を重ねてきました。長年働かれてきたスタッフや歴代の料理人、通い続けてこられたお客様の声を通じて、三笠会館という空間に流れる時間と想いを、できるかぎり丁寧にすくい取ろうと努めました。
三笠会館の100年は、銀座という街の記憶であり、日本の食文化の変遷と響き合うものでもあります。氷水屋から始まった一軒の店が、時代を超えて人々に愛され続けてきた理由を、この一冊を通じて感じてください。

